M&A後の大手企業とスタートアップの現実!起業家3人の本音解禁!


2016年4月。サムライトが朝日新聞社の完全子会社になってから、早3年が経過しようとしています。スタートアップと大企業の融合という大きなテーマに取り組みながら、創業時のDNAを維持し続け、デジタルマーケティングやメディア事業を独自に展開し、朝日新聞グループの中においても異色の存在とも言えるのかもしれません。

そんなサムライトの買収~現在に至る歩みが語られたのが、「朝日メディアアクセラレータープログラム 2019」のデモデイ。サムライト代表の池戸が、同じく企業買収を経験している株式会社LOB代表取締役CEO 竹林史貴氏、株式会社アラン・プロダクツ代表取締役CEO 花房弘也氏とともにテーマトークセッションを行いました。

トークセッションでは、「スタートアップのM&AとPMIの実際」をテーマに、買収された企業の代表たちが、M&Aに至った経緯とその後のシナジー、若い成長企業が大手グループの傘下に入るにあたっての悩みや課題について語りました。

※PMIとは・・Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、M&A後の統合プロセスのこと

3人が本音で語る、M&A、親会社、シナジー

自己紹介の後、モデレーターの山田氏の進行で、3人のパネリストたちがM&Aの背景、親会社との関係、想定していたシナジーと結果について明かしました。

買収の背景

山田氏
まずは、M&Aに至るまでの経緯をお聞きしたいと思います。買収企業との最初の接点はどのような形でしたか?買収決定までの期間はどのくらいでしたか?
花房氏
もともと、僕自身はIPOやM&Aに挑戦したかったので、うちに出向しているベンチャーキャピタリストに相談しました。そこから、ユナイテッドの取締役にお会いし、出会いから買収までは、わりとサクサクっと進んで、半年くらいでした。
竹林氏
楽天の方と知り合ってから企業の買収完了までには1年くらいかかりました。うちに出資してくれていた投資家から、紹介いただくカタチで楽天とつながりました。最初は先方からのアプローチでした。
池戸

サムライトと朝日の出会いは、2015年5月に行われた「Morning Pitch」というイベントがきっかけでした。スタートアップ企業と大手企業の出会いを作る場だったのですが、そこで朝日新聞の方にアプローチしていただきました。「共同事業」「共同メディア」などの話からスタートし、半年後に「買収」という言葉が飛び出しました。

そこから買収が完了するまで4ヶ月くらいかかり、2016年3月に決定しました。通常、買収のプロセスはより長い時間がかかるものですが、スピーディーな対応だったと言えます。大変でした(笑)。

買収企業の交渉窓口、担当者

山田氏
買収企業の交渉窓口、あるいは担当者はどういう立場の人でしたか?
池戸

朝日新聞社においてイノベーションを起こすことをミッションとしたメディアラボの方でした。イノベーションを起こす選択肢のひとつとしてM&Aの可能性を探っており、協議のスタートから共同事業のディスカッション、条件を詰めていく一連の流れを担当されていました。

ちなみに、メインのフロントで立っていたメディアラボの担当者の方は、買収後、サムライトの取締役に就任しています。出会いから買収のプロセスまで全て担当されていた方なので、サムライトのことを誰よりも理解した上でサムライトにジョインし、そして、今ではサムライトにとって欠かせない存在となっています。

花房氏
取締役の方とずっとやり取りをしました。われわれの会社を買う前に、ユナイテッドグループは何社かを買収したことがあったので、慣れていたんでしょうね。
竹林氏
最初、コンタクトを取っていたのは楽天グループの副社長でしたが、日々のコミュニケーションは広告部門の役職者の方でした。その方と毎週お話をさせていただいて、楽天グループとどう組むのかを決めました。また、買収金額のような条件詳細は、事業開発部門の方と詰めました。

PMI体制、親会社からの支援

山田氏
PMIは、「ポスト・マージャー・インテグレーション」といって、M&A実行後における両社のシナジーを実現し、企業価値を向上させるためのプロセスです。買収後の経営体制とPMIの体制や大企業側からの支援はどのようなものでしたか?
池戸

統合前は2人の取締役という経営体制でしたが、朝日から執行役員と取締役の1名ずつジョインしてもらいました。その中でも、事業はもちろん、我々固有の文化や制度を尊重してくださったこともあり、いまでも変わらず「サムライトらしさ」が残っています。買収から3年が経過しますが、ずっとストレスフリーで走らせてもらっています。

人は感情で動く生き物なので、必ず企業内、企業間でハレーションが生まれます。しかし、統合後もメディアラボの方々がサムライトを担当&窓口になってくださり、PMIの成功に向けて奮闘してくださったので、いろんなノイズやストレスを吸収してくださったのだと思います。

花房氏
買収後に、親会社からエンジニアや営業まで、さまざまな職種の方がジョインすることになり、最初はやっぱりモヤモヤしました。学生時代からゴリゴリ事業をやっていた僕が、大手企業のなかで働くことに慣れないといけなかったからです。ただ、僕を含めて現場もだんだん馴染んできまして、いまでは彼らは会社にバリバリ貢献してくださっています。
竹林氏
経営体制に関して、楽天から3名にジョインしてもらいました。ただ、開発に関しては僕らを頼ってくれていたこともあり、現場の状況においては特に変わりはなかったです。一方で、就業規則の統合やオフィスの統一などの場面では、僕と現場の調整に時間がかかりました。

買収時に想定していたシナジー

山田氏
買収時に想定していたシナジーの設計について教えてください。
花房氏
買収時のビジネス計画にどれだけシナジーを盛り込めるのかが重要です。何のシナジーもなかったら、その事業単体の伸び率や生む価値を伝える必要があります。買収の当時に、わが社はシナジーのない方でした。そのため、「現社員数を踏まえて僕が見込める企業の伸び率」「事業の可能性」をフォーカスにしました。
竹林氏
買収後でも、楽天の広告事業部に貢献するという明確な役割を持っていたので、迷いがなかったです。楽天グループとして、創業以来初めて広告領域に注力していましたが、僕らは楽天の社内チームとともに走らせてもらっています。シナジーというよりも、そのまま働かせていただいた、という感じです。事業のKPIに振り回されることもありません。
池戸

朝日新聞社の広告事業に新しい武器を提供し、広告ビジネスを伸ばすきっかけとなることを求められました。ただ、買収時に想定しているシナジーは計画通りにうまくいきませんでした。今だからこそ思うのですが、想定していたシナジーが生まれなことはよくあることなので、新しいシナジーを見つけ、生み出し、改善していくことが大切になってくると感じています。実際、今は全く想定していなかったシーンでのシナジー創出や取り組みを進めています。

また、スタートアップは事業を伸ばすことが全てなので、よく「1%の守りに99%の攻め」と言われますし、それで問題が起こることもしばしばあります。そんな中、大手企業のバックアップがあれば、もっと「守り」が効率的に強化できます。たとえば、大手企業が持つ税務、労務、法務などの人的リソースや豊富な経験や知識はスタートアップにはすごく貴重です。僕らもいっぱい助けていただきました。

最後に

国内のスタートアップのM&Aが盛んになって、大企業がスタートアップの成長力を活かしていけるようになれば、日本経済ももっと活性化していきます。今回のトークセッションでは、スタートアップのM&Aに関する、なかなか出回らない貴重なトピックが語られ、豊かな学びを得られる機会となりました。

実際、サムライトは朝日新聞グループに入ってから大きく成長しています。しかしまだ道半ば。 サムライトと朝日新聞グループの取り組みが今後の大企業とスタートアップの共存やエコシステムを作る上での成功事例になるべく、奮闘は続いています。

サムライトは朝日新聞グループの一員としてグループでの価値創造はもちろん、今後もサムライトらしく、「広告を情報に変える」「マーケティングの新しいカタチをつくる」というミッションに挑んでいきます。

一緒に挑戦してくれる仲間を絶賛募集中です!興味のある方はぜひ以下のリンクからサムライトのWebサイトをご確認ください!

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ABOUTこの記事をかいた人

colston

広告代理店出身の社会人4年目。アプリ領域の強い代理店から外資系コンサルティング企業に転籍し、オンライン教育事業部の0→1を経験。また、海外メディア企業の日本オペレーションの最高責任者も含めて、フリーランスを応援するWeb媒体のライターとして活動。現在、自社広報に加え、商品開発や海外リサーチなど、数多くのことを実施中。